日本の歴史と振袖

振袖選びは両親の愛情を
確認するためのプロローグです

振袖は、遠く江戸時代から伝わる晴れの日の、日本人の心の衣装です。
同時に、女の子の誕生を心から喜び、大切に育てあげたご両親の愛情のひとつの形でもあります。
大人への最初の一歩を歩き始めたお嬢さまの衣装として、これ以上ふさわしいものはありません。
ここに、成人式に振袖を着る意味があります。

~ 若い女性の美しさを
最高に引き立てる振袖 ~

振袖は袖の長い着物ですが、元々は今の振袖ほど長くはありませんでした。それが時代の流れとともに装飾面が強調されて袖も長くなり、江戸時代後期には、未婚女性が着る衣装として定着していきました。

なぜ振袖の袖が長くなったのか、そして未婚女性の衣装になったのでしょうか。有力とされているのが、江戸時代の踊り子たちの存在です。彼女たちは、舞台の上で舞踊を披露するとき、より美しく華やかに見せるための工夫をしました。やがて一般の女性たちが真似をして広まったといわれています。

また、女性が男性から求愛されたとき、イエスなら袂を左右に、ノーなら前後に振って意思表示をしていました。これは未婚女性に限ったことで、袖を振る必要のない女性、つまり既婚者は振袖の袖を短く詰めた着物(留袖)着ることになっていました。
私たちは、恋愛関係で「振る」「振られる」という言葉を使いますが、その語源は江戸時代にあったのです。

新元号「令和」と振袖に込められた万葉の思い

平成の時代が終わり、日本最古の和歌集『万葉集』に由来する新しい元号「令和」が決まりました。実は万葉集は振袖とも深いつながりがあります。

万葉集には、袖を振って、旅に出ていく人の無事と健康を祈る歌があります。袖が長いほど、大きく振れば振るほど、その効果があるとされていました。日本人の細やかな愛情表現が見てとれますが、そんな万葉人の心が、悠久の時を経て、いまの振袖に流れていると言えます。

振袖の美しさは、一言で語ることはできませんが、ほんの少し、その背景にある日本人の心を知ることで、さらに振袖のすばらしさを認識できるでしょう。