新型コロナウィルス感染拡大が危惧され、政府の基本方針発表に伴い小中学校の休校や、イベント等の中止が相次いでいます。いつの世も見えないものに対する恐怖は抑えがたく、平常心を保つのは困難ですが、手洗いやうがいなどやるべき予防をキチンと行い、正体不明のウイルスに必要以上に不安をつのらせないようにしたいものです。一番怖いのはウイルスよりも恐怖で引き起こされるパニックなどの人の心かも知れませんね。

こんな世情ですので今日は少しきらびやかなお話をしましょう。

プレミアム振袖や高級振袖などの言葉をお耳にしたことはございますか?平たく言えば高額の振袖と言うことになります。では一般の振袖との違いはどんなところにあるのでしょうか?

 

  • 生地の違い

振袖の生地には極まれに化学繊維の生地を使うことがありますが、そのほとんどは絹100%の正絹と呼ばれる素材の生地が使用されています。絹は人の肌と同じタンパク質でできていることから、しなやかな肌触りで着心地も優しく、通気性や保湿性にも優れ、光沢も良く風合いが出ることでも高級な素材とされています。一般もプレミアム振袖もその素材自体に違いはありません。しかし基本、振袖を製作するのに同じ長さの生地が必要となるならば、絹糸の打ち込みが多く緻密なものとそうでないものでは、生地の重みに違いが出てきて、それが価格の違いに現われてくるのです。

  • 製作数量の違い

振袖が出来上がるまでにはさまざまな工程がありますが、生地を実際に染める前にどのような振袖を完成させるのか、家を建てるのと同様に設計図が必要となります。それに基づいて製作は進められるのですが、「草稿」や「図案(デザイン)」という作業が設計図作りの工程になります。誰にデザインをしていただくのかでもそのコストは大きく変わっていきますが、同じ柄での生産反数が多くなれば1枚の振袖にかかる金額は当然少なくなります。例えば10万円のコストが仮にかかったとして、プレミアム振袖のように1柄1枚だけの製作だとそのコストはすべてその1着に、一般の振袖が通常同じデザインで10枚染めるのであれば、各々1万円のコストで済むことになります。そのコストの差が価格に反映されるのは仕方ないことですよね。

  • 加工の違い

そして実際に価格の差が一番出るのは、やはり加工の違いからです。振袖に限らず、着物製作は元来すべて手作業で行われてきました。加賀友禅で有名な手描きの友禅や、総絞りをはじめとするさまざまな手絞りの技法、金駒刺繍などの手刺繍などがその際たるものです。大量生産も可能な型染めにしても、その型は型紙を手でひとつひとつ彫って作り、染めはハケで染めていきますので、型染めも立派な手作業なのです。ひとつひとつの技法を説明させていただくのはまたのお楽しみにしていただくとして、技術者の高齢化や需要に伴い、着物の製作現場での手作業の量は残念なことに激減しています。一度絶えてしまった技術を復活させるのは本当に困難ですので心配はつきませんが、時代の流れには逆らえない部分もあります。それを補うための技術の進歩は、今まで手作業でしか出来なかった作業を機械で行えるようにし、結果、お買い求めやすい振袖を製作することに役立ってはいることがせめてもの救いでしょうか。プレミアム振袖と一般の振袖の加工の違いは、どれだけ人の手に委ねられているかの違いだと言っても過言ではありません。

成人のお嬢さんのお母さん世代は、プレミアム振袖全盛の時代に当たります。今ではなかなかお目にかかれない豪華な加工の振袖が持ち込まれることもしばしば… 。加工のよさが振袖のすべてではなく、何より成人のお嬢さんが一番輝く振袖をお召しになっていただくことこそが、唯一無二の重要課題であることは申すまでもありませんが、もしお母さんの振袖を着せてみたいとお考えなら、ぜひ気軽に望幸にご相談いただけたらと思います。

 

そして新しくお嬢さまのためにプレミアム振袖をとお考えの方もぜひぜひ望幸にお声かけください。これだけ手のかかった振袖は他の呉服屋さんには渡したくないと、ついつい店の在庫にしてしまう私が、おすすめのプレミアム振袖をご紹介させていただきます。

 

店主 望月浩幸