「城間びんがた工房」

私は、人生初の沖縄でした。那覇空港に着くとすぐに、バスに乗りバスの中からの景色を楽しみながら、15分ほどでバスが止まり、少し歩くとうっそうとした緑の中に「城間びんがた工房」の看板をみつけました。
工房の入り口には琉球藍で染められたばかりの反物がほしてありました。この時は漠然ときれいな色だなぁと思いながら通りすぎる感じだったと思います。

まず、琉球びんがたの歴史のお話をしていただきました。
琉球王朝時代に王族しか着衣を許されていなかった沖縄の伝統衣装「紅型(びんがた)」作り手も限られていて、今回お伺いさせて頂いた「城間びんがた工房」さんは、琉球王朝時代から続く紅型三宗家の一つです。「城間びんがた工房」さんは、現在城間栄市さんで16代目になります。ちなみに望幸が現在81周年で3代目なので、16代目と言う事を聞いただけでも「琉球びんがた」は、長い歴史がある染め物なんだと今まで以上に興味が湧いてきました。
「琉球びんがた」の戦後復興
発展を遂げた紅型も19世紀後期、琉球処分によって王制が解体されると、屁護を失った紅型はその需要とともに火が消えていくように衰退していきました。再興の機を待つことなく迎えたのは第2次世界大戦です。沖縄戦の後、壊滅状態となった那覇に戦火を逃れた城間栄喜さんと知念績弘さんが沖縄に戻り王朝時代から紅型三宗家として続く知念家と今回お伺いした城間家の継承者です。物資不足の中、拾った軍用地図を型紙に、割れたレコード盤を糊ヘラに、銃弾の薬莢を糊袋の筒先に

女性の髪の毛を筆先に、沖縄の竹を筆の持ち手に

口紅を顔料に、何もないところから、使えそうな物を自分たちで改良し道具として使い紅型の復興をしていきました。
「琉球びんがた」工程
1) 型彫り(カタフイ)
「琉球びんがた」の型彫りは突彫りの技法が用いられています。(突彫りをすることによってタッチがやわらかくなる)型紙には「白地型」と「染地型」の2種類があり、「白地型」は地を掘り落とし模様を残す方法、「染地型」は逆に地を残し、模様の部分を彫っていく方法。細かな部分から彫り始め、彫り上がった型紙は紗張りをします。道具は手作り小刀(シーク)自分で調整してつかいます、下敷きに使うのは、木綿豆腐を圧縮し3カ月ほど乾燥させた物を使っていました。適度な固さと復元力があり今でも木綿豆腐が一番だとおっしゃっていました。


また、型紙は繰り返し使えるそうですが、紅型の着物は色がきつい為、線で柔らかさを出したり柄のつなぎ目がきれいにいくようにと注意していると話してくれました。小紋の型紙を作るのに約1週間かかり、戦後70年かけて職人3人で約1000枚の型紙を作り上げたと話してくれました。

2) 型附け(カタチキ)
型附けには防染糊を使います。型紙は一枚型を使用して、布面に型紙を置いてその上から防染糊をヘラでしごく方法を型附けといいます。型紙の彫り落とされた部分に糊が施され、生地に模様が型附けされます。仕上がりを左右する為大変重要な作業です。
防染糊は手作り糯米4割・米糠6割が目安 染める生地によって顔料を含む量が変わる為、生地の素材よって配合を調整していきます。
また、防腐と防染効果を高めるために消石灰を入れ、型附け後の糊の亀裂防止のために塩を加えます。

3)色差し(イルシヤシ)
色を差すことを「イルクベー(色配り)」といいます。「琉球びんがた」の美しさはこのイルクベーにあると言われています。顔料と天然染料による彩色の技法も「琉球びんがた」独自のもので、色差しの順序には決まりがあり、朱などの赤系統の暖色系から差して、次第に寒色系を差していきます。(各工房によって色が違うそうです。)

4)隈取り(クマドウイ)
色差し、刷り込みの後の文様の部分にぼかし染を施す「琉球びんがた」独特の技法です。色差し筆と隈取り筆の2本で行う(2本の筆を同時に持ち作業をしていました。)色差しの色によって隈取りする色に決まりがあり、例外的な色の使われ方は極めて稀です。
隈取りでは立体感や遠近感、透明感を出す効果があり、色の補強効果もあります。
隈取を見ればものの良し悪しもわかります。
5)糊伏せ
地染を行う前に文様の上に防染糊を伏せる方法で「ビンウシ―」(紅押さえ)と言います。文様の色防染の白場や文様の白場を効果的に出すための役割を果たします。(白色で染めることはない)
6)地染め
「琉球びんがた」本来の地染めは、顔料、染料による印毛引きの手法で、藍染の場合藍壺に浸けます。地色にはいろいろな色がありますが、中でも黄色地は植物性染料の福木の樹皮から取られる染料で染められ、王朝時代には一番位の高い色とされ、高貴な人々の衣装の地染めに用いられました。
7)水洗
生地に施した防染糊や余分な染料、顔料、薬剤などを洗い落す作業です。水槽いっぱいに張った水の中で軽くたたみ込むようにしながら布が水面に浮かび上がらないように操作します。一定時間水に浸すと自然に糊が柔らかくなり、布から遊離していきます。生地の糊分が残らないように何度も水をかえて水洗を行いますが、その際丹精を込めて作り上げてきた生地が折れたり、擦れがおきたりしないように十分に注意する必要があります。ものによってはこの後さらに型附けや糊伏せの工程が続きます。

「琉球びんがた」の種類
紅型
「琉球びんがた」のビン→「色彩」 ガタ→「模様」と解釈する見解があります。いろいろな手法によって白地紅型・染地紅型・返し型・朧型・手附染に染分けられ、これらは型附(カタチキ)と呼ばれる糊置防染手法による型染めで型紙を当てて生地に糊を塗り、その後で取り去った型紙の模様の部分に色を差す染め方でさらに地染めが施されたものもあります。

藍型
琉球藍を使用し藍の濃淡や墨で染められた紅型を藍型(イェーガタ)と呼びます。型紙は染地(線彫り)型を使います。濃藍から各種の藍の変化と地の白とで大きな模様で表現する藍型は夏の衣料に数多く染められ、夏物衣料として好まれます。

筒描き
糊引(ヌイビチ)と呼ばれています。型紙を使用せずに防染糊を入れた円錐状の糊袋の先から糊を絞り出しながら生地に模様を描き、その後部分に色を差す方法です。主に風呂敷や幕などに使用されています。(写真DSCN1941)
「琉球びんがた」の製作方法は今でも効率化されているわけではなく、とにかく手作業で行うという昔から変わらない方法で受け継がれていることがわかりました。現在16代目の城間栄市さんがその伝統と技術を受け継ぎ、沖縄の文化を守っていることに、伝統工芸の素晴らしさを感じ感動しました。